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MLB

NYの新スターA. ジャッジは本物か



目次
ジャッジの凄さとは
大不振を経験
角度が付きすぎ?不調の原因を探る。
ジャッジは本物か

海の向こうニューヨークでは、MLBの新スター誕生に、大いに沸いた一年となりました。
大歓声の先にいるのは、大型ルーキーのA. ジャッジ(以下、ジャッジ)です。

今シーズン開始前、再建期といわれたヤンキースに期待する声は多くありませんでした。
しかしジャッジの活躍もあり、ワイルドカードを勝ち上がりポストシーズンに進出すると、世界一となったアストロズをあと一歩というところまで追い詰めました。

11月13日には、新人王が発表され、ジャッジは満票でア・リーグ新人王に輝きました。
ヤンキース躍進の中心にいたジャッジは、名実ともに今シーズンの顔となったのです。
今回は、「ジャッジはMLBを代表するスターとなれるのか」をテーマに、打撃データでジャッジを徹底分析していきます。

ジャッジの凄さとは

まず、ジャッジの凄さを紹介します。
ジャッジ最大の魅力は「本塁打」です。ア・リーグ本塁打王に輝いただけでなく、ア・リーグ新人本塁打記録や、ヤンキースタジアムの本塁打記録を更新とまさに記録ずくめのシーズンとなりました。

その本塁打を生み出すうえで、ジャッジ凄さがわかるのが、打球飛距離打球速度です。
以前のコラムでも紹介しましたが、ジャッジは今シーズンの最長飛距離の本塁打を記録しています。
また、MLBの今シーズン全打球13万球から算出した打球速度ランキングでも、100位以内にジャッジだけで26球もランクインし、平均打球速度もMLBで最速でした。

まさに”最大”の能力も、”平均”の能力もずば抜けていることを証明しました。
参考:MLB2017年打者トラッキングデータランキング

大不振を経験

彗星のごとく現れたジャッジでしたが、決して順風満帆なシーズンではありませんでした。
図1に、月別のOPSを示しました。4~6月までは、ハイペースで本塁打を打ち続け、好成績を残していたものの、オールスターを境にジャッジは長い不調に突入してしまいます【図1】。

図1 ジャッジの2017年OPS推移

9月には再び成績を向上させ、本塁打王のタイトルを獲得したジャッジですが、7、8月の成績次第次第では、三冠王も視野に入るほどでした。

ジャッジはなぜ成績を大きく落としてしまったのでしょうか。また、来シーズンに向けて、本当に不振を乗り越えたといえるのでしょうか。トラッキングデータから探っていきます。

角度が付きすぎ?不調の原因を探る。

まずは月別の打球特性をみてみます。
打球飛距離の推移をみると、7、8月の飛距離が大きく低下しており、9月は再び大きく上昇しています【図2】。
また、打球速度も同じような推移となっていることがわかります【図3】。

これらはOPSの推移とも比例しており、ジャッジの調子のパラメータといえます。

図2 ジャッジの2017年平均飛距離推移
図3 ジャッジの2017年平均打球速度推移

次に、打球角度を見てみます【図4】。
図4をみると、不調の8月が最も大きな角度を記録しています。

図4 ジャッジの2017年平均打球角度推移

飛距離が大きくなるのは20°~35°とされていますので、8月の月間平均打球角度は23°と一見良い角度で打ち出しているようにも感じます。
しかし、これはあくまで平均値。
そこで、打球割合も踏まえて不調の理由を見ていきましょう【図5】。

図5 ジャッジの2017年月別打球割合

7、8月は急激に内野フライが増えています。
特に8月は、9月の約10倍もの内野フライを記録したことになります。
つまり平均打球角度が上がっていても、打球速度が遅く、力のない内野フライが増えてしまっただけだったのです。

オールスターを境に、対戦投手はジャッジに厳しく対策をとったのでしょう。
また、ジャッジは活躍すればするほど周りの声が大きくなり、本塁打を期待される重圧もあったかもしれません。
マークのきつくなった攻め方に対して、無理矢理長打を狙うあまりスイングの角度をつけすぎてしまった可能性も考えられます。本来のスイングでないスイングでアプローチした結果、芯を外すことで打球速度は下がり、内野フライを量産していたのかもしれません。
参考:【打撃特集2】注目の指標バレルとは?打球速度と打球角度の重要性2">

ジャッジは本物か

ジャッジは角度をつけすぎて、内野フライを量産してしまい、不調に陥ったことがわかりました。
しかし、9月には再び内野フライを減らして本塁打を量産しました。打球飛距離、打球速度、打球角度のすべてにおいて、好成績を残し、完全復活した姿を見せました。

また、三振割合の推移をみても、7、8月は三振が非常に多かったものの、9月には今シーズンで自身最小の割合まで減らしています【図6】。

図6 ジャッジの2017年月別三振割合推移

2016年にMVPを獲得したカブスのC. ブライアントは、トラッキングデータから適切なスイング角度を身につけ、三振や内野フライを減らしました。

ジャッジがどんな取り組みを行ったかはわかりませんが、打球の質が上がっただけでなく、三振も減らすなどコンタクト能力も高まっていることから、ジャッジも、スイングそのものを修正したのかもしれません。

ジャッジは不振を経験したことでより一段と打撃能力を向上させました。これは不振から復活したというよりは、「進化した」と表現しても良いかもしれません。

ヤンキースの生え抜きスターは、ニューヨーカーだけでなく、全米野球ファンが待ち望んだ存在です。

不振という大きな壁にぶつかりながらも、大きな「進化」を見せてくれたジャッジは、MLBを代表するスターとなるに違いありません!

来シーズンも、A. ジャッジから目が離せません!

参考:「打者」大谷翔平の打球データを分析!数字が示す驚異の能力と今後の課題とは!?

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Baseball Geeks編集部