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MLB

山口俊の”ピッチデザイン”!メジャー挑戦にあたって取り組んだ課題とは



目次
データと感覚をすり合わせる「ピッチデザイン」
繊細な指先の感覚で「ピッチトンネル」も意識

今季よりメジャーリーグに挑戦する山口俊投手。渡米前にさらなるパフォーマンス向上のため、「ピッチデザイン」を行った。山口投手が行った「ピッチデザイン」という取り組みについて、計測を担当したネクストベース・アナリストの森本氏に語ってもらった。

データと感覚をすり合わせる「ピッチデザイン」

―「ピッチデザイン」とは、そもそもどういった取り組みなのでしょうか?

森本 ピッチデザインとは、ピッチャーの感覚と客観的データを組み合わせ、能力開発を行う取り組みです。山口投手にはブルペンで投球してもらい、一球一球球質を測定しながらハイスピードカメラでスロー映像の撮影を行いました。山口投手自身の感覚と、実際に得られたデータを確認しながら課題を解決していくという取り組みです。

―今回、山口投手が「ピッチデザイン」に取り組んだ目的は何ですか?

森本 メジャー挑戦にあたり、新たな投球スタイルやレベルアップすべき課題を一緒に考えました。山口投手は昨冬行われたプレミア12に参加し、外国人打者の特徴を肌で感じたようです。僕自身も、プロの投手をサポートする中で感じた事をヒントに、メジャーで通用する山口投手のスタイルをいくつか提案させていただきました。それらをすり合わせながら課題を設定しました。

―山口投手の投球にはどのような課題がありましたか?

森本 今回の課題は3つありました。
まず1つ目がストレートで空振りを取るためにはどうしたら良いか?ということ。そのために山口投手はフォームを少し「上から叩くイメージ」で投球したいという要望がありました。山口投手がイメージしているフォームと、実際の動きがどうなっているのかを映像を見ながら確認しました。
2つ目はフォークの球質です。フォームを修正することで、武器であるフォークの球質がどのように変わるのかを確認しました。
そして3つ目がカットボールとスライダーの投げ分けです。2019年シーズンは、スライダーの中でも「小さい変化のもの」と「大きい変化のもの」と2種類を投げていました。2020年からはスライダーとカットボールの2つの球種を分けようということで、明確な差別化を図るべく、課題解決に取り組みました。

球質計測を行う山口俊投手

―それぞれの課題について1つずつ教えて下さい。まずは、「ストレートで空振りを取るためにはどうしたら良いか?」という課題に対しては、どのようなアプローチをしましたか?

森本 ストレートに関しては、山口投手のイメージする球質なのかを確認しました。山口投手自身、ストレートは「上から叩くイメージ」で投球していましたが、実際に去年よりもシュートが減ってホップするような球質に変わりました。山口投手自身が目標としているように「高めのストレートで空振りを狙う」という文脈では以前より空振りが奪いやすくなっていると思います。

―フォークについてはいかがでしたか。

森本 フォークは、一般的にバックスピンで落とすフォーク、そしてジャイロスピンで落とすフォークという2種類のものがあります。
山口投手の場合は去年まで少しジャイロスピン気味のフォークでした。先述の通り、今年からはストレートを「上から叩くイメージ」と意識したことで、フォームが上からになり、フォークが少しバックスピン気味になってしまいました。ただし、握り変えたりリリースの感覚を変えたりと試行錯誤した中で、最後はしっかりとジャイロスピンのフォークが投げられるようになりました。映像からでも分かるように、最終的にはジャイロ回転をかけてしっかり落差を出せるフォークを投げることができました。


動画 山口投手のフォーク

―最後にカットボールとスライダーの投げ分けについて教えて下さい。

森本 山口投手は、指先の感覚が鋭くすぐに投げ分けが実現できました。
カットボールに関しては伸びながら滑っていくような軌道。そしてスライダーは大きく曲げるもの。両方の投げ分けがすぐにできたので、今回はもう少し次のステップであるピッチトンネルを構成するというところまで進むことができました。

データフィードバックの様子。左から山口投手、ネクストベース・森本

繊細な指先の感覚で「ピッチトンネル」も意識

―山口投手のピッチデザインはいかがでしたか。

森本 スライダーとカットボールの投げ分けの話であったように、山口投手の身体感覚はとても鋭いです。今回の測定においても、データや視覚的なフィードバックがあるとすぐに実践できることに驚かされました。
当初は、それぞれの球質の確認で終わると思っていましたが、「ピッチトンネルをどのように構成していくか」という課題にまで取り組むことができました。さらに、「自身の球質を生かした投球コースはどこなのか?」というところまで深堀りすることができたので、メジャーでのピッチングや活躍のイメージが明確に湧いた測定会になったのではないでしょうか。

動画 山口投手のカットボール

今回は、山口投手の行った「ピッチデザイン」の様子を聞いた。感覚とデータを融合した最先端の取り組みは、今後パフォーマンスアップに欠かせない取り組みになるだろう。
セ・リーグ最多勝右腕のメジャーでの活躍に大きく期待したい。

森本 崚太(もりもと りょうた)

株式会社ネクストベース・アナリスト。 トラッキングデータをはじめとした野球データの解析を担当。 プロ野球球団および選手にフィードバックやコンサルティング。菊池雄星投手ほかプロ・アマ多数の投手の球質測定やピッチデザインの支援も行う。昨年7月発売の「新時代の野球データ論」では記事執筆も担当。

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