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プロ野球

プロ野球選手向け勉強会「プレイヤーズミーティング」開催報告



目次
球団はデータをどのように活用しているのか?
選手はデータを欲している
「データで野球がうまくなる」を目指して

Baseball Geeksを運営するネクストベース社では、プロ野球選手向けの勉強会「プレイヤーズミーティング」を開催してきた。この取り組みは昨年度から始まっており、今年は合計6回開催した。今回はこの勉強会の狙いや感想とともに、現在のプロ野球およびメジャーリーグ(以下メジャー)でのトラックマンの運用状況について述べていきたい。

球団はデータをどのように活用しているのか?

2018年シーズンを終えストーブリーグまっただ中の日本プロ野球界。ドラフトやFA、トレードで戦力を補い世間を賑やかしたチームもあれば、逆に戦力ダウンが否めないチームもあった。球団のフロント(オフィス)がチームをどう編成していくのかを議論することも野球の楽しみ方の一つだろう。
球団フロントは、チームをどう強くするのかという視点からトラックマンの導入を進めており、広島東洋カープを除く11球団のスタジアムにはトラックマンが設置されている。データの分析については新しくアナリストを雇用したり、分析する部署を新設するなど、球団フロントが独自に分析の環境を整えている。
参考:「トラックマン」とは?最先端の計測機器で取れるデータを紹介!!

しかし、各球団トラックマンを導入したものの、「活用」という部分ではまだ時間がかかりそうな印象を持つ。これは日本だけでなくメジャーにおいても同様である。これまで、セイバーセミナーやウインターミーティングなどでメジャーの球団で働く多くのアナリストと意見交換してきた。セイバーメトリクスに慣れ親しんだメジャーの球団であっても、トラックマンデータの活用においては試行錯誤が続いているというのが現状である。
参考:メジャートップアナリストが集結した野球データセミナーに参加してみて

選手はデータを欲している

そのような中、菊池雄星投手はじめ、多くの現役プロ選手から「上手くなるにはどのようにしてデータを活用したらよいのか」という問合せがあった。このような要望に応えるため、オフを利用してプロ野球選手向けの勉強会「プレイヤーズミーティング」を開催してきた。
選手によって予備知識に差があるため、「基礎編」「応用編」の2コースに分けて開催した。
・日米のトラッキングデータの活用事情
・ボールの回転に関する物理的知見
・どのようなボールが打たれないのか
・ボールを遠くに飛ばすためのバッティングのメカニズム

これらの内容を、できるだけ分かりやすく、できるだけ楽しく、そして正しく伝えられるような勉強会を目指してきた。
日本のトラックマンデータは開示されていないため、勉強会ではメジャーのデータや独自に取得したデータを用いざるを得ない。
しかし、受講した選手達には目から鱗の話題や自分のパフォーマンスアップのためのヒントを伝えることができたのではないかと感じている。「オフシーズンに習得しておくべき球種は○○」、「ウエイトトレーニングをして球速をあと○km/h上げる」、「食事を改善して除脂肪体重を○kg増やして打球速度を上げる」など、具体的な目標を立てて帰っていく選手を見て、こちらもワクワクしてしまった。

「データで野球がうまくなる」を目指して

科学というものは、あることをいう場合に、それがほんとうか、ほんとうでないかをいう学問である。 つまり、 いろいろな人が同じことを調べてみて、それがいつでも同じ結果になる場合に、 「ほんとうである」といえるのである。(中谷, 1958)

例えば、ある選手が冬にウエイトレーニングを行い, 打球速度がトレーニング前よりも上がったとする。 しかし、これがそのトレーニングをしたから打球速度が上がったとは言いきれない。なぜなら、「トレーニングをしなかったから打球速度が上がらなかった」と言えなければ、本当であるとは言えないのだ。

Baseball Geeksでは、「データは選手自身が上手に活用すべきもの」という思いで、多くの知見を提供してきた。先述したように、「パフォーマンスが上がった、下がった」ということは、様々な要因を総合的に分析し判断しなければわからないのである。だからこそ、選手自身がデータを読む力が必要とされるのだ。
今回の勉強会に多くの選手達が自ら足を運んでくれたこと、選手達の質問内容や考え方のレベルが非常に高いことに素直に感激し、スポーツ科学への関心の高まりを改めて実感することができた。

2018年最後のコラムとなるが、今回の勉強会で関わったプロ選手たちの来シーズンの活躍を強く願うとともに、2019年の野球界がトラックマンデータを、そしてスポーツ科学をもっともっと活用する転換期となることを期待したい。

参考:中谷宇吉郎(1958)科学の方法(岩波新書)

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Tsutomu Jinji